【完】黒薔薇の渇愛





ドキドキしていることを、この男はきっと察してくれないと思う。

まるで恋心を、桜木の口から吐き出される煙に隠されてるみたい。


そういえば……私、桜木と初めて会った時に無理矢理キスされたんだっけ?


最悪な出会い方をしたせいで、この男が大っ嫌いだった。


けど今は違う。


桜木に『キスしたいんだけど』と冗談を言われて
口では拒んだけど気持ち的には全然……嫌じゃなかった。


変なの。


こんなに好きになるなんて絶対変。



「そろそろ行こっか」



タバコの吸い殻を携帯灰皿に捨てながら、バイクに跨がる桜木の後ろに私も慌てて乗る。



「ねぇ、天音ちゃん」


「うん?」


「いや……、もっと俺の腰に手回しな?
 しっかり掴まってないと振り落とすからね」


「えっ、と……このくらい?」


「もっと。背中に胸押し付けるくらい」


「……」


「あはっ、シカトされちゃった。
 男の欲望は口に出しちゃうと嫌われるね~」



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