【完】黒薔薇の渇愛
こんな時に冗談を言う桜木の背中を、ポカポカ叩いてやりたいけど、回した腕を今さら振りほどけない。
ゆっくりとバイクが走り出し、しばらくして大通りに入るとすぐに綺麗な景色が目を輝かせた。
大丈夫……だよね、きっと。
私、変じゃないよね?
胸のドキドキが伝わってないか心配だけど、世界の音がきっと掻き消してくれている。
なにも不安がることないよ。
桜木を遠くに感じて胸がザワついたことだってきっと。
ーー勘違いだから。