【完】黒薔薇の渇愛







数分後、住宅地までやってくると、どの家も四角の窓から明かりを溢し、地面を照らしてくれている。



送り慣れた私の家の前までやってきて、桜木はバイクを停めると私からヘルメットを受け取った。



「送ってくれたのと……あと、助けてくれてありがと」


桜木が来なきゃ今頃どうなってたか分かんない。


危険な目に合うと、嫌でも体の奥がゾクッと寒気を呼び起こす。



「……」


おかしい。


いつもペラペラとよく喋る桜木が、ジッと私を見下ろしたまま一向に口を開こうとしない。


えっ……なに?

私おかしな態度とったかな?


だって別に、私の気持ちなんか桜木にバレてるはずないもん。



「桜木……大丈夫?」


沈黙という気まずさに耐えきれなくなって、自然な上目遣いで覗くように桜木の顔を見る。


無表情なのに、どこか切なそうな、思い悩んでいるようなその顔に。

恐怖とは違ったものが、私の胸のなかでザワつき始める。



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