【完】黒薔薇の渇愛
助けてほしくて、涙でボヤけた視界にいる奏子に向かって手を伸ばす。
でもその手に桜木は自分の指を絡め、逃がさないと態度で示してきた。
「や……っ、だって、ば」
一瞬だけできる隙に、頑張って言葉を紡ぐ。
それから数秒して桜木の唇が離れると。
私は肩で息をしていた。
死ぬかと思った。
喰われるんじゃないかって本気で思った。
「ただの地味な女だとは思ったけど……。
感じてる顔は可愛いね、天音ちゃん」
「……っ、さい……てい」
「えー、俺を恨むのはお門違いでしょ。
だって君を好きにしていい許可、彼氏君からちゃんともらったし」
「ねぇ?」と同意を求めようと桜木は奏子に目線を移すけど、奏子はその目と合った瞬間恐ろしいものをみたと言いたげにビクッと肩を震わせた。
「なーに、そんな怯えた顔して。
言っとくけど、女の子売って金儲けしてる岡本奏子君の方が俺よりひどいことしてっからねー?」
「いや……あの」
「君の彼女とっても美味しかったよ、ありがとうねー。
それじゃあお遊びはここまでにしましょうか」