【完】黒薔薇の渇愛






彼の吐息が静寂を掻き消す。


すると、乱暴に両手首を捕まれ、彼の眼光は刃の様な鋭さで私の心の中を切りつけるように入り込んでくる。



「それはこっちの台詞。」


「……」


「"こっち側"に踏み込んできたのはお前だろ」


「……」


「……天音ちゃん見てると、ハラハラするからイライラする。
 君を見てると全然落ち着かない自分が気味が悪い」


「……」


「でもそれだけじゃ離れようとは思えなかった。
 けど、優理花の件があって、傷ついてる君を見てると……俺は自分がどうしても許せなくて。
 なのに……せっかく人が離してあげようと無視したら、こんどは自分から近づいてくるとかバカじゃないの」


「……っ」


「なんで俺なんか好きになってんだよ」



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