【完】黒薔薇の渇愛
「まあ、そんじゃ。
らしくないけど、助けてあげましょうかねー」
グリグリと地面に落としたタバコの火を靴先で消す桜木は、長い手を伸ばし拾って携帯灰皿に有害物質を捨てる。
「あっ、ありがとうございます……もうこんなことは本当にしませんから……っ」
天に召されたの如く、幸せな方の逃げ道を選んでもらえたと安堵する奏子の姿に憎悪がひどく漲た。
なんで……なんで私にこんなことしておいて、奏子は簡単に許されるの?
いつもそうだ。
いじめられていた時も、いじめる奴が絶対悪いのに
いじめられてる方が必ず悪者扱いされる。
人混みに紛れ込めないだけで、こんなにも生き辛い。
でも……だからって、私が何をした?
神様に胸を張れないほど、悪いことなんて何ひとつしていないのに。
「……っ、……」
泣くことしかできない自分がみっともない。
だけどしょうがないじゃん。
泣かないと、やってられないことだってあるんだから。