【完】黒薔薇の渇愛
そんなの私が一番聞きたいよ。
桜木と最後に会話をしたあの日
彼は確かに『今日のこと、許してあげない』って言っていた。
あれは私を襲おうとした男たちや優理花さんのことじゃなく。
自分のことを言っていたなんて。
「やっぱり、優しいんだね桜木」
じわりと潤んだ瞳、なのに心は暖かく、彼に自然な笑顔を見せる。
「……俺が優しいとか、気持ち悪いからやめてくんない?」
「優しい優しい優しい……」
「やめろ。」
グシャッと大きな手に頭を鷲掴みされた。
その瞬間、時が止まった様に少しの沈黙と目だけが合って、お互いなんだか照れ臭い。
桜木の私の頭に置いていた手が、そのまま流れる様に頬まで落ちてきた。