【完】黒薔薇の渇愛




「恋愛感情でいう好きとか、俺よくわかんないんだよね」


「……うん」


「女好きになったことないし、体の相性がイイのと美人だったらもっと良しとか思っちゃうような人間だよ?俺」


「うん」


「そんな俺のなにがいいの」



なにが良いのかなんて分かんない。


優しい……って思う時もあって、同時に酷いって思うこともたくさんあった。


それでも好き。

分かんないのに……追いかけちゃうくらいこんなに好きなんだよ。



「何か好きじゃなきゃ……だめ?」


「……」


「好きってだけで、とくに理由はないの。
 ただ、桜木が好き」


「……」


「好きだよ」



ゴクリと、彼の喉仏が上下する。


するりと撫でられる頬。
桜木に触れられてるだけで感じてしまう私の肌は、ピクリと反応をしてしまう。



桜木の手が、私の唇に触れた。



彼の顔がどんどん近づいてくる。


瞼を下げて、伏せられたまつ毛は影を作り。


今この瞬間、出来上がったふたりの世界に、唇を合わせようとした。



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