【完】黒薔薇の渇愛




開いたドアから解放される、ひどい雨音。

バタンと乱暴に閉められたドアに、お母さんの苛立ちと焦りが垣間見える。



なにがあったんだろう。


俺がそう思ったって結局教えてくれないくせに
どうして俺には何かを求めたがるんだろう。


……分からない。


お母さんはきっと俺のこと嫌いだよね。


けどまあ、俺が好きだからいいと思う。



「あーあ、早くお父さん帰ってこないかな~」



呟いてひとり、無駄に広い家の中で親の帰りを待っていた。


あれから連絡も何も来ず
結局お母さんが帰ってきたのは、深夜の0時を回っていた。


乱暴にドアが閉まる音で、リビングのソファでいつの間にか寝ていた俺は目を覚ました。



手で目を擦りながら、玄関に向かうと
片方だけ靴を脱いで、微動だにしない母の姿がそこにある。




「お母さんお帰り~」


「……」


「あれ?父さんと一緒じゃないの」


「……」


「こんな時間までどこ行ってたの」




< 262 / 364 >

この作品をシェア

pagetop