【完】黒薔薇の渇愛
開いたドアから解放される、ひどい雨音。
バタンと乱暴に閉められたドアに、お母さんの苛立ちと焦りが垣間見える。
なにがあったんだろう。
俺がそう思ったって結局教えてくれないくせに
どうして俺には何かを求めたがるんだろう。
……分からない。
お母さんはきっと俺のこと嫌いだよね。
けどまあ、俺が好きだからいいと思う。
「あーあ、早くお父さん帰ってこないかな~」
呟いてひとり、無駄に広い家の中で親の帰りを待っていた。
あれから連絡も何も来ず
結局お母さんが帰ってきたのは、深夜の0時を回っていた。
乱暴にドアが閉まる音で、リビングのソファでいつの間にか寝ていた俺は目を覚ました。
手で目を擦りながら、玄関に向かうと
片方だけ靴を脱いで、微動だにしない母の姿がそこにある。
「お母さんお帰り~」
「……」
「あれ?父さんと一緒じゃないの」
「……」
「こんな時間までどこ行ってたの」