【完】黒薔薇の渇愛
「別にさ、助けようとか正義のヒーローぶるつもりもなければ、どうなろうと知ったこっちゃないんだけど。
ほらー、天音ちゃんにはキスっていう対価もらっちゃったし。
この場合、まあ助けてやってもいいかなーぐらいの軽い気持ちなんだよね。」
「なっ……」
「さようなら~、岡本奏子くん」
ヒラヒラと手を振る桜木。
その時、ガラガラと音を立てて開くシャッター音。
目の前が急激に明るくなる。
逆光して見えない多くの影がゾロゾロと、倉庫に入ってきて、奏子を取り囲む。
まったく状況に追い付けない私とは違って、焦る奏子は「うわぁあぁああ!!」と情けない叫びを響かせている。
それを呆然と見ている私に、桜木は声をかける。
「天音ちゃん立って。
暇だしついでに送ってあげる~。
俺ってやっさしいね」
「……」
どこが優しいんだ、どこが。
悪の塊じゃないか。