【完】黒薔薇の渇愛







ツッコミを入れてやりたいけど、さっきから金魚みたいに口をパクパクさせるだけで声がでない。


それもそのはず……だってこんなことに巻き込まれて堂々としていられるほど私神経図太くない。



「たすけ……すみませんでした……だから、たすけっ」


「おらっ、さっさと歩け」


「さっきからうるせーんだよお前、いい加減黙りやがれ」



私に向かって……というか、もはや誰でもいいから助けてほしい奏子は必死になって手を伸ばすけど

大勢の人に連れていかれて、倉庫内から消えていく。



「総長、あいつ"どの"程度で済ませましょうか?」


黒マスクに黒の特攻服を着た金髪の男が桜木の前にやってきて、親指を倉庫の外に向けながら言う。


「あー、適当でいいよー。
 姉さんの方は無事保護できた?」


「はい、……ですが本人はなけなしの自我で病院に行きたがらないんですよ。
 ひどいことされたことへの詳細を言いたくないんでしょう」


「……そう。
 母さんには俺から伝えとくから。
 身内の面倒ごとに巻き込んじゃってごめんね?
 今日はもう帰っていいよ」


「はい……総長もお気をつけて」


「はーい、ありがとう」



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