【完】黒薔薇の渇愛
仲間とのやり取りを済ませて、くるりとこちらを振り向く桜木。
さっきから『総長』と呼ばれて、それに奏子のあの怯えよう…。
もしかして、ううん……もしかしなくても
暴走族なんだよね……この人。
「なーに俺の顔ジッと見つめて。
またキスしたくなってきた?」
「……っ!?」
「でもさ、天音ちゃんキス下手くそだよね~。
鼻で息しなきゃ、苦しいだけでしょ。
まあ初で可愛かったけど~、新鮮だよねそういう子周りであんまり見かけないから興奮しちゃった」
「……」
「てか岡本奏子君とはキスもまだな感じ?
へぇー、売る前に自分が味見するタイプの人間なのに、キミ相当奏子くんのタイプじゃなかったんじゃない?」
言いたいことだけ言って、クスクスと笑いながら歩き出す桜木。
……この男に、心ってものはないのかな。
普通触れちゃいけない部分って、言わなくても察してくれるものだと思っていた。
けど、桜木は違う。
桜木は私のことなんかどうでもいいからこそ、平気でひどい事が言えるんだ。
……あの人たちと同じ。
この人も、私をいじめてきたあの人たちと同じだ。