【完】黒薔薇の渇愛
それからは、予想通りの展開。
うちの情報屋の朱光は優秀で、すぐに岡本奏子を見つけることができた。
弱っている女に手を差し伸べ、自分しかいないと人の心の隙間に入り込み
飢えた親父相手に"売り"をやらせる。
姉さんもその被害者のひとり。
こいつは爽やかな顔をしていて、意外とやってることは度を越えていて、化けの皮を剥がすのに大変そうな奴だった。
後に、岡本奏子事件のほとぼりが冷めた頃
久しぶりに会った姉さんに
母さんが俺に冷たいのは、「自分のせいだと思っていた。」と打ち明けられた。
俺が家に帰らないのも、「自分が家にいるから」だと。
自分だけ可愛がられている様に感じることへの罪悪感。
俺への申し訳なささに、あの家に居ることが苦痛になったんだと。
姉さんはひとりじゃ、あの家から逃げ出すことができなかったんだろう。
だから岡本奏子に心の隙を突かれて、うまく利用されてたってわけ……。
母さんにお礼を言われるなんて気持ちが悪いから、逢美の奴らに頼んで姉さんを家まで送り届けた。
そこまでは順調だった。
しかし誤算もあった。
まさか、こんな事で大地さんの妹に出会うなんてね……。
和倉天音。
名前だけ一緒ならよかったのに。
朱光に調べさせたら、まさかまさかの大地さんの妹さん。
……これが大地さんの妹?
くそほど弱くて、泣き虫で、しまいには初めての彼氏が岡本奏子君だなんて。
見る目もなけりゃ、俺が一番イライラするタイプの人間じゃねーか。
この子、本当に大地さんと同じ血繋がってんの……?
正反対にも程があるでしょ。
まー、いいや。
多分もう会わない。
これっきり。
もう会うことはない。
そう思っていたのに。