【完】黒薔薇の渇愛
「ほんっと、目が離せなかったんだよね。天音ちゃんって」
桜木と大地お兄ちゃんの出会いの話を聞いて
好き勝手生きてる様に見える桜木にだって、重い過去があることを知った。
でも、強く生きてきた桜木だからこそ
下手な同情はいらないと思った。
きっと同情なんかしたら怒るに決まってる。
だから私は、あえて桜木の柔らかい部分には触れない。
「なんで……」
「ん?」
「なんでお兄ちゃんと知り合いだってこと言ってくれなかったの……?」
「んー……なんでだろうね。
別に言う必要もないかなって。」
「なっ……!?」
「だって知り合いだって言ったら、天音ちゃん。
お兄さんの知り合いだからって、俺のこと丁寧に扱いそうじゃん」
「そんなこと……」
あるかも。
お兄ちゃんの友達とか、先輩とか後輩とか
妹としてなんだか身構えちゃって一線引いちゃうことあるもん。
その事を知っていた桜木は、「分かりやすいねー」と、クスクス笑い始める。