【完】黒薔薇の渇愛





秘めていた熱が放出されるのを、全身で感じる。


心の奥で眠っていた怒りが瞬間的にすべて解放されていく感じ。


その怒りの矛先は、彼に向いてしまった。


「桜木」


「ーーんっ?」


ーーパンッと、軽くひ弱な音が倉庫に鳴り響く。



ほんの少しの衝撃には、さすがの桜木は動じず
顔を真っ正面に向けたまま、その綺麗な顔を叩いた私をジッと見つめていた。



「急にどうしちゃったの天音ちゃん。
 暴力なんて、一番嫌いそうなのにねぇ」



そんなの私が一番驚いてるよ。


なんで私はこの人に手を出したんだろう。


自分を忘れて、我に返って、だけど……不思議と気持ちよくも、気が済んだ気にもならない。



ただの"無"だけが、残ってしまった。



……全然スッキリしない。




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