【完】黒薔薇の渇愛
怖い。
痛い。
どうしてこんな目に合わなきゃいけないんだろう……。
でも
桜木に出会わなければ、こんな目に合わなかったとして。
今頃幸せ、なんて言えるはずがない。
桜木に会わなきゃ、ダメなの。
会わなくちゃ、好きになれなかったから。
好きになるなら、絶対桜木じゃないと嫌だから。
だから……だから。
「桜木……っ、助けて!!」
求めれば、必ず現れるヒーローを信じて。
狭い車内で叫ぶと。
「テメェ……!」
桜木の名前に異様な反応を見せるこの人は、一方的に桜木を恨んでる様にしか見えない。
男が拳を突き上げた瞬間、目を瞑ると。
「うわっ……!?」と、運転していた林部が急ブレーキを踏む。
そのせいで、私に覆い被さっている男は後ろにバランスを崩し、内側の窓にゴンッと頭を打った。