【完】黒薔薇の渇愛
「いっ……てぇ!
おい林部!もうちょっと丁寧に運転しろ……っ」
「さ……哲」
「あ?」
「前……桜木がいる」
「はあ!?」
哲は助手席と運転席に上半身だけ無理矢理割って入り、フロントガラス越しに一直線を見つめる。
私も体をお起こし、恐る恐る見ると。
その先には、バイクに跨がった桜木がいた。
「急にバイクが飛び出してきたと思ったら、桜木が……!
どっ、どうすんの総長!」
さっきまで黙っていた黒髪の男が声を震わせ怯えている。
この人、哲のこと総長って……今言ったよね?
ってことは、この人たちも暴走族ってこと?
「あ、焦んな。
こっちには人質がいるんだ。
つか……前から逃げられねえならバックしろ!!」
「無理だよ!」
「あ……!?」
「だって後ろにも逢美の連中いるんだもん……っ!」
バックミラーを覗く林部の顔は真っ青だった。
後ろを振り向くと。
朱光さんと雪羽さん……それに、逢美の人たちがちらほらいる。