【完】黒薔薇の渇愛
「……っ!」
車内の焦りは限界に近づいていた。
すると。
「おい!」
「ーーへっ?」
哲は車のドアを開けると、乱暴に私の首根っこを掴み、放り投げる。
「わっ……!」と小さな悲鳴をあげながら、私は車の中から押し出され
アスファルトの上に倒れ込んだ。
「天音ちゃん……!」
今まで聞いたことがない桜木の焦った大きな声。
彼はバイクを停め、私の元に駆け寄ってくると
しゃがみこんで私の目線に合わせてくれた。
「大丈夫……?」
「うっ、うん。桜木が来てくれたからなんとか」
「……」
「桜木……?」
桜木が私の手を掴んで無言で立たせる。
……またこの目だ。
桜木がたまに見せる、光のない目。
桜木は気にしてるみたいだけど
それは皆が言うように……黒薔薇みたいだ。