【完】黒薔薇の渇愛
「じゃあね」と言って手を振る桜木に、違和感を感じて。
「あの……っ」
バイクを走らせ様とした彼の動きが、私の声で止まる。
「どうしたの、早く家の中入りな?」
「明日……っ」
「ん?」
「明日……も、会える?」
不安なの。
またあの日みたいに、桜木が私の前からいなくなっちゃうことが。
だから……。
「うん、明日ね」
ニッコリと笑って、彼は呆気なくバイクを走らせ、私の前から消えていく。
私の勘違いだったらいい。
桜木……変な気起こしたりしないよね?
安心していいはずの、最後に残されていった桜木の笑顔の意味を。
私はまだ知る由もない。