【完】黒薔薇の渇愛



当然、兄にいじめを打ち明けられる勇気なんてない。

だからいじめは続いた。

私が傷つこうが誰が何をしようが、手を抜かず余すことなく毎日地獄を見せてくれる。


家族にも……いや家族だからこそ言えない。

いじめられているなんて恥ずかしい。


恥ずかしいから、言いたくない。


じゃあ一体誰に言えばいい……誰に言えば救ってもらえるの。


気づけば自殺を考えていた。


『苦しくない死に方』なんて、インターネットで検索なんかしちゃって。
パソコンとスマホの履歴はその文字でいっぱいになっている。


もう一度思う、これ以上の不幸はない……と。


だけど不幸とは、立て続けに起こるもので。



その日は終業式があり、嫌な思い出しかない高校一年生が終了した。


やっと春休みだと、盛大にため息を吐いたのはいいけど。

いつも家に居るはずの専業主婦であるお母さんが家にいないことにすぐに違和感を感じる。


なんとなく嫌な予感がして、携帯を見ると。


お母さんから不在着信が10分前に三回入っていた。


恐る恐るかけ直してみるけど、こんどはお母さんの方がとらない。



チクタクと、家の時計が私の不安を煽る。


っと、次の瞬間握りしめていた携帯が静かな家に鳴り響く。



「お母さんーー、もしも…………」


電話にでた瞬間


母の泣き声と、鼻をすする音が聞こえてくる。



なんで泣いているの……?



そう聞いたか聞いてないかは覚えていない。


けど。


母の一言が、私の弱りきった胸の奥をグシャ……ッと握り潰した。





< 34 / 364 >

この作品をシェア

pagetop