【完】黒薔薇の渇愛





「あっ……あのお母さん……!」


約束を破ったのは事実だし、謝らなきゃ。


そう思って、口を開くと
なぜかお母さんの目は桜木に向く。



「あれ……、あなた」


なにかを疑うように、目を細めながら桜木を見る母。


数秒で考え終えると、思い出したのか、口を開いた。



「どこかで見たことあると思ったら、よく大地のお見舞い来てくれた子でしょ?
 お花、いつもありがとう。」


「……っ、気づいてたんですか?」


「そうね……大地の病室から出てくるのを何度か見たことがあるわ。
 けど、話しかけてほしくなさそうだったから。」


「……」


「ずっと、お礼言えなくてごめんね?」


「……いえ、大地さんにはお世話になってるので」





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