【完】黒薔薇の渇愛
「あ……れ?」
記憶が過去に飛んでいったのかと思いきや
目を覚ませば見慣れない白い天井が視界には入る。
「私……えっと……?
どこ、ここ」
嫌なことを思い出していた。
夢じゃない……
だってあれは、すべて私が経験してきたことだから。
奏子と付き合ってからは心が安定して
最近はぐっすり眠れていたから、悪夢を思い出すことなんてなかったはず。
だけど奏子があんなひどい人だったことを知って……。
って……奏子?
「夢じゃないってこと?!」
ガバッと勢いよく上半身を起こし、辺りを見渡す。
すると、モゾモゾと隣で真っ白なシーツが動いて、そのシーツからグレーアッシュ色の髪が見え隠れしていた。
起きたばかりの頭はガツンと痛く。
眠りに落ちるまでの記憶を何とか遡ろうと、色々思い出していると。