【完】黒薔薇の渇愛
「それにしても可哀想な子。
でも君の彼氏が悪いんだよ~?
だからちょっと……お仕置きしなくちゃ」
「……っ」
「今あるこの状況に恐怖を感じているなら。
君はあの男のせいで巻き込まれたってこと。
恨むなら彼氏を恨みな」
「……」
「って、今の台詞、どっからどう聞いても悪役の台詞じゃん!
なーに、俺悪くないのに~」
ケラケラと笑う男の声は、大きくはないのに嫌に響く。
倉庫の窓から差し込む月の光が、吐く息を白く見せる。
体が震える、カタカタと。
寒いからじゃ……ない。
怖くて、今にもどうにかなってしまいそう。
だけど、なんでだろう。
怯えてるくせに、目は男を睨む。
自分でも不思議なくらい、男に敵意を向ける。
怖いのに、でも体のどこかは怒りを抑えられなくて。
そんな私を見て、男は一瞬驚いた顔を見せたけど
すぐに口角をあげ、また笑った。