【完】黒薔薇の渇愛





「泣きすぎて、目腫れてるかと思ったけどそうでもないんだね」


「……えっ?」


「君、覚えてない?
 泣きながら俺に向かって倒れてくるから、反射的に受け止めちゃってね。
 命乞いかと思えば、気絶してるし。」



「……」


「完全に意識を失う前に『お兄ちゃん』って言ってたけど。
 本当に助けてほしい時に呼ぶ相手は愛しの岡本奏子じゃなくてお兄ちゃんなんだねー。
 家族想いでよろしいことで。」


「……っ」



お兄ちゃん。


弱い私を、いつも護ってくれた。


けど、お兄ちゃんは未だ目を覚まさない……。


事故で打ち所が悪かったから、いつ目覚めるかわからないって医者に言われた。



本当に辛い思いをしているのはお兄ちゃんなのに。


そんな人に助けを求めるなんて……ほんと弱すぎるよ私。


いい加減に、自分でなんとか出来る様にならないといけないのに。




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