【完】黒薔薇の渇愛





「ねえー、ベッドの上であからさまに悄気(しょげ)るのやめてくれる?
 ほんっと天音ちゃんってば萎えるよね~」



ふぁー、と欠伸をして立ち上がる桜木は
床に適当に投げられたであろうシャツを拾って着始める。



「……ほんっと失礼ですね、あなた」


「だって本当のことじゃん。
 てか敬語やめてくれる?
 一晩一緒に過ごした仲なのに冷たいねー」 
 

「……っ!?
 寝ただけでしょ!!」


「うそつけ、俺のこと離してくれなかったくせに。
 天音ちゃんの変態さんめ」


「……もうやだ嫌い」



大きなため息を吐いて、私もベッドから立ち上がる。


そのまま帰ろうと、ワンルームの部屋を一直線に玄関の方に向かうけど。



「ねえー、天音ちゃん。
 寝言でも『大地(だいち)お兄ちゃん』って名前を泣きながら呼んでたけど。」
 お兄さんってどんな人なの~?」


桜木が不思議なことを聞いてくる。


私のことなんかよりお兄ちゃんのことを気にするなんて……変なの。


それでも久しぶりにお兄ちゃんのことを誰かに話せると思うと、うずうずしてついつい軽口になってしまう。





< 42 / 364 >

この作品をシェア

pagetop