【完】黒薔薇の渇愛
「ねえー、ベッドの上であからさまに悄気るのやめてくれる?
ほんっと天音ちゃんってば萎えるよね~」
ふぁー、と欠伸をして立ち上がる桜木は
床に適当に投げられたであろうシャツを拾って着始める。
「……ほんっと失礼ですね、あなた」
「だって本当のことじゃん。
てか敬語やめてくれる?
一晩一緒に過ごした仲なのに冷たいねー」
「……っ!?
寝ただけでしょ!!」
「うそつけ、俺のこと離してくれなかったくせに。
天音ちゃんの変態さんめ」
「……もうやだ嫌い」
大きなため息を吐いて、私もベッドから立ち上がる。
そのまま帰ろうと、ワンルームの部屋を一直線に玄関の方に向かうけど。
「ねえー、天音ちゃん。
寝言でも『大地お兄ちゃん』って名前を泣きながら呼んでたけど。」
お兄さんってどんな人なの~?」
桜木が不思議なことを聞いてくる。
私のことなんかよりお兄ちゃんのことを気にするなんて……変なの。
それでも久しぶりにお兄ちゃんのことを誰かに話せると思うと、うずうずしてついつい軽口になってしまう。