【完】黒薔薇の渇愛






「だっ、大地お兄ちゃんはね……優しくて強くて。
 弱い人を放ってはおけないヒーローみたいな人なの」


そんな人が家族だったおかげで
男は皆、優しい生き物だと思っていた。


だけど小学校の時に、『やーい、根暗~』と鼻水を垂らした情けない男子にからかわれて以来
小学生にして男に夢をもたなくなったっけ。


だから……あの日。


『いじめなんてみっともない、やめろよ』


お兄ちゃんが事故にあって

両親が悲しみに暮れている時、余計にいじめをのことを言い出しづらくなって
でも学校に行かなきゃ怪しまれるから、辛い日々にひとりで耐えていたいつものこと。


隣のクラスの奏子が、何の躊躇いもせずに女子トイレに入ってきていじめを止めてくれた。



こんな人……本当にいるんだ、と。


お兄ちゃんみたいな正義のヒーローって本当にいるんだ……って。


その日私は初めて不幸に耐えた自分が報われたような気がしたんだ。




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