【完】黒薔薇の渇愛
カァ……と顔が熱くなる。
まるで図星を突かれたみたい。
……そんなんじゃない。
お兄ちゃんは、別に自分が得しようとして
人に優しくしたわけじゃないし
好きで私を置いていったわけじゃない。
「違う……もん」
「んー?」
「お兄ちゃんは……お兄ちゃんは、ちゃんと戻ってくるもん!!」
一番……お兄ちゃんと一緒にいた頃を思い出して、子供みたいに叫びながら
私は桜木の前に立ち、彼の胸板を手をグーの形にして何度も叩いていた。
「ちがう……どこかへ行ってなんかない……」
「……」
「ちゃんと……ちゃんと帰ってくる……から……」
そうでしょ?お兄ちゃん。
そうじゃなきゃ、お兄ちゃんの人生
何のためにあったのか分かんないよ。
もし戻ってこなかったら、それもまた運命だって受け入れなきゃいけないの……?
運命に、人生に抗うのはやめたつもりだった。
だけど、これじゃあまるで報われない。
私もお兄ちゃんも……報われないじゃないか。