【完】黒薔薇の渇愛





下唇を噛みながら、ダランと力なくした両手は
桜木の胸板をそれでも叩き続ける。


けど。


「ねぇー。
 それで俺は、君の攻撃を何回食らえばいいわけ?」



この男に優しさなんてないんだから
私が過去を思い出して泣いたとしても、慰めのひとつやふたつ、人としての優しさなんて少しもくれるはずがない。



「やられたらやり返すって、俺言ったよね?」


「……っ、ひぐっ……」


「泣いたって無駄だよ。
 俺の頬叩いた分と、今の分。きっちり返させてもらうから覚悟して」


「……」


「あーあ残念。
 前の分はチャラにしてあげようと思ったのにねー。
 君ってほんと、自滅形の人間だよね」


「……っ」



とことん私は、出会う人間の運がないみたい。


別に……今さら、今更怖がってなにになる。



いいよもう、別に。


もういい加減、疲れることにも疲れたよ。




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