【完】黒薔薇の渇愛
「どうしたの、怖い顔しちゃって。
せっかくの可愛い顔が台無しだよ?」
「……」
「もしかして彼氏のこと言われて怒っちゃった?
さっきまであーんなに怯えてたくせに……それって愛の力だったりする?」
「……」
「愛ねー、はは、それで怒ってるなら可愛いっていうか……君結構おめでたい頭してるね」
「……」
「でも大丈夫、そんな愛すぐ消えて失くなるから。
君の彼氏がここへ来たとき、君はすぐに嫌いになるよその男のこと」
「……勝手なこと言わないでっ」
「あっ、喋った。」
緩んだ声帯から、こぼれでるような小さな声を出す。
さっきからペラペラと、適当なことばっか言って。
この男に、私と彼のなにを知っているっていうの……?
怒りで余計に目を細めてしまう。
だって、目頭に力を込めとかないとすぐにでも泣いちゃいそうなんだもん。
弱いってバレる。
強がってないと……彼の隣にはいられない。
だって彼は強いから。
強くないと、彼の隣には相応しくないと思うから。