【完】黒薔薇の渇愛
その言葉の続き、つまりは言い訳が出てこない。
……あぁ、そうだ。
この人の言う通り、私は奏子のことが心配なんだ。
裏切られたことよりも、助けてくれたあの時の気持ちの方が強すぎて
この気持ちを……捨てられないでいる。
「岡本奏子君に何しようが、俺の勝手でしょ。
君だけじゃない、他の女も彼にひどいことされちゃってるって分かってる?」
「……けど」
「そうだねー。俺の姉さんにさえ手を出していなければ、彼が女をどう扱おうが興味ないんだけどねぇ……」
「……」
そうだ。
桜木が奏子に怒るのも無理はない。
自分の家族がひどいことされて黙ってるなんて
さすがのこの男にもできないんだ。
けど……なんだろうこの違和感。
お姉さんのこと、本当に心配してるなら
なんでお姉さんのもとに駆けつけないんだろう。
それにこの人、私を拉致ったとき倉庫で
『……まあ、自分の身内がってよりも……逢美の総長として黙っておくわけにはいかなかったんだよねー。舐められたら困るし』って、言ってたよね?
それって全然、心配してないじゃん。