【完】黒薔薇の渇愛
恐る恐る桜木の服の袖から手を離す。
数秒の沈黙が流れ始め、それは永遠に続く時の流れにとって、ほんの一部にも満たないものなんだろうけど。
私からすれば、この時間こそ永遠に感じる。
緊張と、気持ち悪さと、彼という名の敵に教えてもらったほんの少しの抗いは
吉とでるか……凶とでるか。
「……女の子にひどいことするなんて、人としてどうかと思わない?天音ちゃん」
「ーーえっ……ッ!?」
反応が少し遅れてしまうほど、桜木の私の手首を引っ張る力が強すぎて。
ーーダンッ!とドアに押し付けられた。
背中にくっついたドアがひんやりと冷たい。
「お喋りがすぎるよ、天音ちゃん」
「……っ」
「なーに分かった風に、俺のこと語っちゃってんのかな?」
「……」
「忘れてないか?俺は君をいつでもどうにだって出来るってことを」
「……」
「状況判断もできないマヌケは、痛い目見るってこと。何度その身体に教えれば気がすむんだろうねー?」