【完】黒薔薇の渇愛
ーーグッと私の太ももの間に、桜木の脚が割って入ってきた。
ドアノブはすぐそこにあるのに、桜木が私の両手首を掴んで自由を奪う。
「抗えって……あなたが言った」
「言ったね~。でも君が抗ったところで俺が"はいそうですね"で終わると思う?」
「……」
「俺のいる場所で、俺に逆らうなんて。
頭の悪い証拠だよ?」
「……っ」
この男は言ってることとやってることがめちゃくちゃだ。
掴めない、掴ませてくれない。
桜木は、話は聞いてくれても、同調は絶対にしない。
自分が言ったことさえも、どこか他人行儀な男。
この男の言う通りになんかするもんじゃない。
けど、抗い方を教えてくれたのは
確かにこの男でもあった。
不思議と……さっきよりも強気な自分がいることに自分自身が驚いている。