【完】黒薔薇の渇愛





『今日は絶対、寄り道しないで帰ってきなさい。』


丸1日、連絡もせずに帰ってこなかった私を、非行にでも走ったんじゃないかと慌てふためいたお母さんが

学校に行く前、玄関先で不安そうに言った。


『どうして連絡しなかったの』

『お友達のところに泊まりに行くなら、一言ちょうだいよ』

『本当に心配したんだから、もう少しで警察に行くところだったのよ』



女の子がひとりってだけで、両親からはどちらかと言うと甘やかされて育った方。


お兄ちゃんのこともあって、お母さんは余計過保護になった。


しかもちょうど、お父さんは出張で家を空けているから、いろんな不安をお母さんに背負わせってしまっている。



『友達の家にどうしても泊まりたくて……。
 お母さんに反対されるのが嫌で連絡しなかったの』


苦し紛れの言い訳。


だけどお母さんは、普段休みでさえまったく遊びに行かない私に友達がいないんじゃないかと不安がってた人だから。


そんな一発で嘘ってバレる言い訳も、鵜呑みにする。



友達の家に泊まっていたなんて、まるで自虐ネタだよ。


私に友達なんかいないし


そんな奴が男の家に一泊したなんて、もし誰かにバレたら
変な噂を流されるに決まってる。


だから……秘密。


というか、無かったことにしておきたいのが本音かも。




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