【完】黒薔薇の渇愛
「ーー着いたぞ、降りろ」
荒い運転に荒い口調。
スキンヘッド男は、雑にバイクを停めて早速私を愛車から降ろしたがる。
「いっ、言われなくても分かってるから……」
草と土に砂を交えた真っ暗なガタゴト道を突き抜けて、やってきた場所は何もないところ……に思えたが。
少し歩かされたところで、見えてきたのは古びた廃墟。
草に呑み込まれた廃墟は、遠くから見たら緑色に見えて森の一部と化して見える。
こっ……怖い、なにこれ心臓ドクドク鳴ってうるさいし
今にも死んじゃいそう。
ガタガタ震えてる私を挟んで歩くスキンヘッド男と茶髪男が、ジロジロ見てくる。
「なにお前。さっきあれだけ強気に俺らに絡んできたくせに。
今は怖がってるとか意味わかんねー」
茶髪男がポリポリと頭を掻きながら言う。
「だっ、べっ……別に怖くないし。
いいから早く桔梗のところ連れていってよ」
「うるせえな、お前人質なのに人質らしくねーよな。
もしかして彼氏があの逢美の桜木だからって、すぐに助かると思ってんだろ?」
言いながら、スキンヘッド男が私を見下す。
「そっ……そう!私にこんなことして、あなた達どうなっても知らないから……っ」
「おう。お前は俺らの楯なんだからしっかりその役目果たせよ」
「……楯?」
「……ったりめーよ。桜木が俺らに手出してきそうになった場合、お前のこと使ってやるよ」
「……っ」
「なに怖がってんだ。
お前の使い道なんてそのくらいしかないだろ」