【完】黒薔薇の渇愛
ーーっと。
「うわあぁあぁあ!!!」と、男の野太い悲鳴が、曲がり角にある扉のない部屋の中から聞こえてきた。
その声に聞き覚えがある。
耳について離れない、何度も私の傷心を癒してくれたその声。
奏子だ。
「なあ……今のって」
「あぁ……間違いない。奏子……だよな?」
スキンヘッドと茶髪男が顔を見合わせる。
そんなふたりに構っていられず、私はひとり走り出す。
「おい……!勝手に行動すんじゃねー!!」と、後ろからスキンヘッドの怒りと怯えが含まれた声が聞こえてくるけど。
相手している暇はない。
一刻も早く奏子に会わないと……!
何のためにここまで来たのか分からない。
「そうし……っ」と、勢い任せに部屋に入ると
桜木が奏子の胸ぐらを掴んでいるのを目の当たりにする。
床にはひとり、男が伸びきっていた。