【完】黒薔薇の渇愛
「あー、なぁに……って、天音ちゃん?
なんでここにいんの」
目は暗闇になれてしまっているせいか、辺りが夜明けにも似た明るさで映し出される私の視界に。
奏子の胸ぐらを掴んだままの桜木は……とても、不気味に見える。
「……っ、奏子を離して……」
「……は……はぁー?なに言ってんの君。
まさかコイツ助けるためにここまで来たとか言うんじゃないよね?」
「……だったら、なに」
「……」
黙り始める桜木。
だけど、次の瞬間。
彼は豪快に笑い、廃墟に渇いた笑い声を響かせる。
怖いのは確かなのに……その姿に目を逸らせない。
「バッカなんじゃないの。
なに、正義のヒーロー気取り?
女は黙ってヒロインやってればいいものを。」
「うっ、うるさい……桜木に関係ないでしょ」
「いーや、あるねぇ。これどっからどう見ても俺が悪役になっちゃってんじゃん。
悪いことしたのは岡本奏子君なのに……ねぇ?」