【完】黒薔薇の渇愛




奏子の胸ぐらを掴む桜木の手に余計力が入る。


「がっ……はぁ……。
 なんで……ちゃんと女売ったお金返して……昨日解放してくれたはず、なのに……っ」


苦しそうに喋る奏子は、今にも息が止まってしまいそう。


それでも桜木は、奏子を離さない。

それどころか、顔色ひとつ変えることなく
奏子を無表情で見ていた。



「それは雪ちゃん達が勝手にしたことでしょー?
 俺自身は、岡本奏子君にまだお仕置きしてなかったよね?」


「……もう、十分だ……ろ」


「はあ?」


「……へっ」


「なにが、十分なの。まだまだこれからでしょ。」


揺さぶられる。


その、渇いた目に。


遠くから見ている私でさえ、桜木の圧にやられて
さっきから身体の震えがとまらないのに。


桜木の目に呑み込まれている奏子なんか、私の何倍も恐怖を感じているに違いない。



「……っ」


だめだ、体が動かない。


こんなことやめてって言いたいのに、口すら動かない。





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