【完】黒薔薇の渇愛
そんな時。
「ーー桜木!!!!」
空気を読まない冷たい手が、私の背後から伸びてきて。
桜木と奏子に釘付けだった私は、敵に背中を見せてしまったことをすぐに後悔する。
声を荒げて桜木の名を叫んだスキンヘッドの男。
その隣で私の口を押さえて、片手だけで私の両手を拘束する茶髪男。
奏子に制裁を加えようとした桜木の手は止まり。
……桜木も奏子も、予想しなかった出来事に目をこちらに向かせた。
「……あ?……なぁに、今いいところなのに。
つーか火炎の雑魚は雪ちゃん達が片付けたと思ったのに、まさかの取り逃がし?
まーったく、俺がいないとあの子達はまともに動くことも出来ないのかねぇ……」
ダルそうに首の骨をゴキゴキと鳴らす桜木。
矢を放つ様な、桜木の鋭い視線に
スキンヘッド男と茶髪男は一瞬怯むが。
茶髪男がその怯えを隠すように、拘束している私の手にグッと力を込めて桜木を睨む。