【完】黒薔薇の渇愛
「こっちはテメェの"女"人質にとってんだ!!
言うこと聞く方が利口だとは思わねえか!?」
スキンヘッド男が叫ぶたび、彼の身体の振動は髪を掴まれてる私にまで伝わってくるのに。
「……俺の……おんな?」
キョトンとした顔で桜木は私と男達を見る。
それもそうだよ……桜木の女なんて、私がここへ来るための嘘なのに。
ずっと信じてる、この人たち。
……あーあ、今ここで嘘ってバレるのも時間の問題。
その時は私、どうなるんだろう。
桜木をネタに嘘ついたことがバレて。
桜木本人からお仕置きされた後、火炎のメンバーからも何か痛いことされちゃうんだろうな……。
ていうか、我ながらめちゃくちゃお人好しだと思う。
こんな思いまでして、裏切ったはずの奏子にあの時の恩だけは返したいなんて……。
ちがう、分かってる。
本当はいじめられてきた分、見て見ぬふりされることも、することも怖くて。
私のなかのただの偽善と呼ばれる正義が
ただ今の行動に映し出されてるだけ。
奏子を助けるのも、自分の欲を満たしたいだけなのかもしれない。
助けてくれる人はいるんだよってーー……。
自分自身が言い聞かせてるだけなのかも。