【完】黒薔薇の渇愛




「このままさっきみたいに、君を押し倒して、先に食べちゃおうか?」


「……っ、食べるって」


「ほれ。俺って優男だから、君のことはある程度見逃して来た方だけど。
 こう周りをうろちょろされると、自分から願って食われに来てるようにも思えるんだよねー……」


「!?」


本当に食べられそうな勢い。


どうしていいか分からず、顔をおもいっきり横に逸らすと。


「じゃあちょっと味見だけでも」


桜木は私の手を取って、ちゅっと手根にキスしてきた。


「なっ……!?」


意味が分かんない。


言葉がでてこない。



さっき転んだときに手に出来たかすり傷。

それに軽く歯を立てる桜木は、その傷口から私のなかに入って侵略してしまいそうな勢いだ。



「痛いの痛いの飛んでいけ~ってね。」


「……」


「くだらない事言わないでくれる?」


「いや自分で言ったんじゃん……」


「とーにーかーく!」


ツンッと桜木は、私の眉間に人差し指の腹を押し付ける。



「こんど邪魔したら、いくら女でも手加減しねーから」


「……」


「先に食べられたいなら、どうぞ。
 遠慮なくいただきます」


「……」


「痛い目合いたくなきゃ、黙ってろ」


「ーーッ」



< 98 / 364 >

この作品をシェア

pagetop