【完】黒薔薇の渇愛
「このままさっきみたいに、君を押し倒して、先に食べちゃおうか?」
「……っ、食べるって」
「ほれ。俺って優男だから、君のことはある程度見逃して来た方だけど。
こう周りをうろちょろされると、自分から願って食われに来てるようにも思えるんだよねー……」
「!?」
本当に食べられそうな勢い。
どうしていいか分からず、顔をおもいっきり横に逸らすと。
「じゃあちょっと味見だけでも」
桜木は私の手を取って、ちゅっと手根にキスしてきた。
「なっ……!?」
意味が分かんない。
言葉がでてこない。
さっき転んだときに手に出来たかすり傷。
それに軽く歯を立てる桜木は、その傷口から私のなかに入って侵略してしまいそうな勢いだ。
「痛いの痛いの飛んでいけ~ってね。」
「……」
「くだらない事言わないでくれる?」
「いや自分で言ったんじゃん……」
「とーにーかーく!」
ツンッと桜木は、私の眉間に人差し指の腹を押し付ける。
「こんど邪魔したら、いくら女でも手加減しねーから」
「……」
「先に食べられたいなら、どうぞ。
遠慮なくいただきます」
「……」
「痛い目合いたくなきゃ、黙ってろ」
「ーーッ」