いつかメロディを。
序章
防音室に曇りながら響くピアノの音。
窓の外は馬鹿みたいに快晴で。あたしはバッハを弾き終わったあとに少し窓を開けてみた。
「今日、暑すぎ。」
あたしはそう言って、ばっと窓を閉めた。
熱風はまだほおにまとわりついて気持ち悪い。
「咲希、遅れるよ!」
お母さんの声がうっすらと聞こえる。
ピアノの蓋を閉じてから、あたしはスカートのシワを伸ばした。真新しい制服はあたしをワクワクさせる。
「はーい」
クーラーを消して、一階に降りて、姿見を見た。
流石に高校生には見えないか、今はJKブランドってはやりがあるからちょっとそうなってみたかったんだけど。早めに学校に着かないといけないから、少し焦って、鞄を背負う。
「行ってきまーす!」
「ちょっと、咲希ちゃんとお父さんに挨拶したのー?」
「うるさいなあ、わかってるって、」
すっかり忘れていたくせに分かっていたようにドタドタと足を鳴らして和室に行く。遅れそうだって分かってるくせに、なんでわざわざ言ってくるわけ。面倒くさがりつつ、お父さんの遺影に手を合わせた。
(会ったこともないですけど、今日も私は元気ですよ。)
なんて少し意地悪く、思春期らしい反抗を見せて、瞑った目を開けた。
「じゃあもう行くね!」
「いってらっしゃいー」
軽やかにドアを開けると熱風は全身にまとわりついて、足を重たくした。
日本の空気は相変わらず気持ち悪いな、と思った。
窓の外は馬鹿みたいに快晴で。あたしはバッハを弾き終わったあとに少し窓を開けてみた。
「今日、暑すぎ。」
あたしはそう言って、ばっと窓を閉めた。
熱風はまだほおにまとわりついて気持ち悪い。
「咲希、遅れるよ!」
お母さんの声がうっすらと聞こえる。
ピアノの蓋を閉じてから、あたしはスカートのシワを伸ばした。真新しい制服はあたしをワクワクさせる。
「はーい」
クーラーを消して、一階に降りて、姿見を見た。
流石に高校生には見えないか、今はJKブランドってはやりがあるからちょっとそうなってみたかったんだけど。早めに学校に着かないといけないから、少し焦って、鞄を背負う。
「行ってきまーす!」
「ちょっと、咲希ちゃんとお父さんに挨拶したのー?」
「うるさいなあ、わかってるって、」
すっかり忘れていたくせに分かっていたようにドタドタと足を鳴らして和室に行く。遅れそうだって分かってるくせに、なんでわざわざ言ってくるわけ。面倒くさがりつつ、お父さんの遺影に手を合わせた。
(会ったこともないですけど、今日も私は元気ですよ。)
なんて少し意地悪く、思春期らしい反抗を見せて、瞑った目を開けた。
「じゃあもう行くね!」
「いってらっしゃいー」
軽やかにドアを開けると熱風は全身にまとわりついて、足を重たくした。
日本の空気は相変わらず気持ち悪いな、と思った。
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