吸血姫の血を継ぐ少女
第一章
序章〜Preface〜
久しぶりに現れたその人は、小さい頃から見た
記憶の姿からは全然変わっていなかった。
真っ暗な闇なのに、空に浮かぶ満月の光がやけに眩しくて、その人をまるで照らすように光っている。
例えるなら天井に照明器具があって、その人の為だけに光を当てているようだ。
明かりを照らされたその人は、私からしたら絶対に触れてはいけない。
気軽に話しかけたりしてもいけない。
まして、声なんてかける事も。
まるで芸能人みたいだ。
けど芸能人じゃない。
傍から見たら完璧すぎるくらいに綺麗だけど。
でも、その人は゛人間じゃないから゙
静かすぎる空間に、ふと柔らかい風が吹いてきた。
すると、その人は小さく笑う。
その姿はあまりにも綺麗で、思わず見惚れてしまう。
小さい頃から変わらない姿に、胸が痛むのは気のせいだろう。
何故なら、今はあまりにも冷たい目で私を見ている。
コツコツと足音を鳴らして近づいてくると。
“………………………俺と一緒に来るか?それとも別を取るか。決めるのは君次第だ。〝
更に冷たい声で私の名前を呼んだ。
< 1 / 10 >