吸血姫の血を継ぐ少女
靡かせた髪の毛の一房が肩にかかり、気づいた私は乱れを直そうと手で振り払う。
その何気ない行動に、目の前を歩いてきた男子高校生の顔が真っ赤に染まる。
まるで見惚れてしまったのように。
それに気がついた私は小さく息を吐く。
このように見られるのは慣れてる。
嫌でも。
しかし、困った。
こういうときって、どう対応をすればいいんだろう。
良く見たら他校の制服を着ている。
全く知らない人だし。
でも、今は怖い世の中になっちゃったし。
たからといって、好意を見せるような思わせぶりな態度もね?
どっちがいいんだろう。
仕方がない。
心の中で緊張を取るために軽く息を整える。
私を見る男子高校生へ、にこりと笑いかけた。
好意は無いけれど、睨むよりはマシよね。
すると、ゆでダコのように顔を真っ赤にさせると、いそいそと歩くスピードを早めて通り過ぎていった。
通りすがりに何気なく見てはいたけど。
「結衣ーーーーーー。見たわよ!!」
後ろから、太陽より明るい声が聞こえてくる。
誰だかわかった私は、ゆっくり身体の向きをかえた。
顔を引き攣らせてはいたけどね。
ショトヘアーの似合う可愛らしい女の子が瞳に映る。
「おはよう、夏穂ちゃん!」
明るい太陽のような笑顔をする女の子は、ブンブンと手を振り回して近づいてきた。
何故か、にやにや厭らしい笑みを浮かべている。
夏穂ちゃん。
可愛らしい顔には似合わないよと思うのは黙っておく。