キミと、光さす方へ
「直哉、直哉起きて!」


悲鳴に近い声を張り上げる。


しかし直哉は少しも反応してくれない。


血だまりはどんどん大きくなっている。


「誰か助けて! 人が……!!」


叫ぶけれど声が掠れて出てこない。


どうすればいいの?


どうすれば……!


「琴江、どけ」


突然あたしの体を押しのけたのはお父さんだった。


「お父さん……?」


「心配で追いかけてきた。くそ、救急車が必要だな」


窓から中の様子を確認してお父さんはテキパキと対応している。


あたしは救急車が来るまでの間、呆然としてその場に立ちつくしていたのだった。
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