キミと、光さす方へ
足元が危うくなり、立ち止まっているのに、なにもないのに、よろけてしまう。


咄嗟に父親が手を強く握ってきた。


あたしも握り返そうとしたけれど、上手く力が入らない。


重たくなった体はそのままズブズブとコンクリートにめり込んでいってしまいそう。


幼いあたしは本当に自分がコンクリートの中に入ってしまうと感じて恐怖した。


スゥっと、全身が冷たくなっていくのを感じる。


「どうしたの?」


お母さんの声が、ようやく声として認識できた。


目の前が暗くなっていくのと、体が横倒しに倒れるのはほぼ同時だった。


「もう、この街にはいられないか……」


あたしの体を抱きかかえて、お父さんがそう言ったのが聞こえたような気がした。
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