キミと、光さす方へ
☆☆☆

2人で帰る道はいつもとは少し違う。


隣りに誰かいるということがなんだかくすぐったい。


そして昨日の十字路に差し掛かった。


足を止めて周囲を確認するけれど、昨日の白い自転車はどこにもいなかった。


ホッとして勇人へ視線を向けると、勇人は今までになく真剣な表情でこちらを見ていた。


その瞬間心臓が跳ねる。


なにかを予感したかのようにドキドキし始める。


あたりはオレンジ色から闇色へと変わっていく最中で、よく見ると薄く月が出ているのがわかった。


「琴江」


勇人の声にビクリと反応してしまった。


「な、なに?」


聞く声が震えている。


勇人の次の言葉を期待している自分がいる。


だけど聞いちゃいけないと思っている自分がいる。


『目の前に大きな幸せがあるのに、絶対に自分からは手を伸ばさない』


泉の言葉が蘇ってくる。


あたしは目の前の大きな幸せに手を伸ばしていいんだろうか?


それって許されることなんだろうか?
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