闇に堕ちたシンデレラ

「あなたに魔法をかけてあげる。幸せを掴む素敵な魔法を！」

ボロボロの服を着て、タイルの床を雑巾で拭いていたあたしの目の前に、とんがり帽子をかぶった魔法使いが現れ、ニコリと笑って言う。そして手に持った杖を一振りすると、あたしは一瞬にして水色の綺麗なドレスを見に纏っていた。足には綺麗なガラスの靴がある。

「わあ、綺麗！」

目を輝かせるあたしを見て、魔法使いはまた杖を一振りする。すると、カボチャが立派な馬車に一瞬で変わった。

それに乗ってあたしは煌めくお城へと向かう。今日は舞踏会だから……。

でも、王子様があたしに優しく手を差し伸べてくれた時に気付く。これが夢の世界の物語だって……。

カボチャの馬車は夢のまた夢。遠くで朝を告げる電子音が鳴り響き、退屈な日々の始まりを教えている。

ああ、永遠に夢の世界ならいいのに……。



あたしが目を覚ますと、お嬢様のような華やかなでもなく、かと言ってシンプルでもない普通の女の子の部屋があった。

「また夢か……」