闇に堕ちたシンデレラ
クローゼットのように見えた街が一瞬にして牙を向いた。万引きという刺激的なゲームを楽しむシンデレラだったあたしはただの灰かぶりに戻り、追ってくる王子様から懸命に逃げる。

『悪いことをするといつか罰が降りかかるよ』

あの時に会った男の子の言葉が頭の中に蘇るけど、もう遅い。

あたしは店員を撒くために裏路地を自分でもどこを走っているのかわからなくなるほど必死に走った。息が切れ、足がジンと痛んでも、ただ走り続ける。

気が付けば辺りは暗くなっていて、月が輝いていた。あたしはようやく足を止め、荒くなった息を整える。

「ハアッ……ハアッ……ティアラは何とかゲットできた……」

でも、きっとあの店員は警察に被害届を出していると思う。だからこれはシンデレラの劇では使えない。別のもので我慢しなきゃ。

その時、誰かがいる気配がした。でも左右を見ても誰もいない。

「上だよ、う〜え!」

可愛らしい声が響いてあたしが上を見ると、とんがり帽子を被って黒いワンピースを着た女の子がほうきに乗って空中に浮いていた。ニコニコと楽しそうに笑ってる。
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