月夜に私は攫われる。


「次は数Bだよ?ほら前回の授業の範囲、ワーク3ページ分宿題って言われたでしょ」

「そ、そんなのあったけ。覚えてないなー.....なんて」

「あの先生、宿題回収するタイプだから。やってないと後が怖いし、多分平常点高めにしてるから」


ひ、と私は青ざめる。数学はただでさえ苦手で、テストの点が取れない私にとって平常点は唯一の救済だ。


「ど、どうしようやってない...因みに三ページって片ページで数えてる...よね?」


仁愛はにっこりと笑う。その表情はまさしく慈悲に溢れた女神様のよう。
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