月夜に私は攫われる。

『え、沢野さん!?そんなに慌ててどうしたの』

『その、私の本。見ま、せんでしたか!?青色の表紙の、ちょっと厚めのやつです』


直ぐに息絶え絶えのまま、本題を切り出した。司書さんは人差し指を顎に当てて首を少し傾げる。


『ああ、もしかして昼休みに貴方が教えてくれた本ね?』

『そうそれです!!見ませんでしたか!?』

『見たけど......あれ。もしかして、返されてない?』

『え、どういうことですか!?』


身を乗り出して食いつく私におかしいなあと呟いて眉を寄せた司書さんは、昼休みの、私が出ていった後のことを話してくれた。


『沢野さんが居なくなった後、すっごい格好いい男の子が、誰かが本を忘れていることに気付いて私のところに来たの』

『で、届けたいから知ってたら名前を教えてくれって言われて貴方の学年と名前を伝えたんだけど....』

『私てっきりもう届けてもらったと思ってたわ。きっと返すタイミングが合わなかったんじゃない?』


衝撃の事実にピシャリと固まる。

私の本は、そのイケメン(らしい)な男子が持ってる....?
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